月刊SALON OWNER 9月号の巻頭特集8ページ(理美容教育出版発行)に、(一社) 日本ヘッドスパ協会、当協会の認定サロン“スパ&エステティック ハナハナ”が紹介されました。
特集のテーマは『プロだからこその提案』。インタビュー取材には、当協会の創立者であり、ヘッドスパ理論と技術開発者である石橋清英理事(技術顧問)と、当協会主催の第3回オープンセミナー(お客様の“YES”を勝ち取るキーワード・コミュニケーション)の講師を務めた伊藤誠一郎理事(スパ&エステティック ハナハナ オーナー)が対応しました。掲載いただきました記事のダイジェストは、以下をご一読ください。
※なお、雑誌購入ご希望の方は、理美容教育出版03-3861-7421まで、お問い合わせください。 |
●ヘッドスパとは何か
「21世紀になればストレス社会となるため、そのストレスを軽減しなければ人間の健康は追求できない。また健康でなければ美容の追求もできない、といった考えから始まっています。中でも頭部が身体に強い影響力を持っていることがわかり、特化して研究を進めたものがヘッドスパです。
ここから癒しの観点で美容の技術をすべて見直し、一段上の価値観を創造していくことを考え、新しい価値を創っていくことを目的に2006年に当協会を設立しました」と石橋理事が歴史を振り返る。
●新しい価値観
価格競争にあってサロン経営が厳しい状況下で、新たなサービスを模索し理美容業界が着目したのがヘッドスパ。世の中でも話題であったため導入するヘアサロンが急増したが、思ったほどの収益を上げられない、といったヘアサロンも少なくなかった。
単に技術ができるようになったからといっても、お客さまが受け入れてくれるかどうかは別の話。そこで設立から10年の歳月が経った2016年、一般社団法人化を機に組織変更を行ない、理美容師だけでなく、他業界からそれぞれ第一線で活躍する人材を理事として招聘。技術や美というものだけでない、ヘッドスパの新しい価値観をしっかり伝えられるような、4つのステップを構築しました。
●心を動かす4つのステップ
Step1は、公式テキストブック「できるヘッドスパ」に記載している技術や哲学といったベースをしっかりと学び、ヘッドスパの本質を理解すること。
Step2では、お客さまとのコミュニケーション能力を高める。まずは信頼を得なければ次につながらない。「その際、どのメニューを最初に行なえば納得してもらえるか、ということを考えることが重要です」。まずはそのお客さまが納得することから勧めるために、その重要感を訴える共感力を培うこと。
そしてStep3は、ホームページやSNS、タブレット端末、店内POP等々を用いて、ヘッドスパの価値を伝えて興味を惹く。ただ、それでもお客さまの心は動かないこともある。
そこでStep4のプレゼンテーション。お客さまが疑問を持っていたり、考えているときにポツンとひと言添えると、『やってみようか』という気になる。「長々と説明してもお客さまは動かないものです。そこで専門家の知恵を借り、短いキーワードからプレゼンテーションができる仕組みを構築しました」。
●信頼を得るからこそ
やはりお客さまが求めるものを汲み取ることは欠かせない。「お客さまの悩みは1つとは限りませんが、その中で有効性が出やすいものを優先するべきです。その見極めはプロならできるはず」
もちろん叶えられる技術力があるのは言うまでもないが、造形美と色彩美だけなく、もっと広く美を見る目を持つこと。たとえばエステティックでは、すべてのお客さまがメイクありきの美しさを望んでいるわけではなく、素顔の美を願っているお客さまも少なくない。また美容室なら良いヘアスタイルになるのは当たり前で、普段の生活の中で簡単に再現できることに価値を見出していることもあるはず。
このことを理解したうえで提案するからこそ、お客さまの満足度を確保でき次につながっていくのだ。「“売る”ことだけを考えていれば、スタッフも何か売り込まなくてはいけない、提案しなければいけないと、苦手なことでプレッシャーを感じてしまいます。それでは上手くいくはずもありません。したがってお客さまの信頼を得ること、満足度を高めることに集中することが先決なのです」
●“『売る』から『売れる』へ……”
伊藤 (今の理美容業界を見て) 技術者出身の経営者が多いことは理解できますが、経営者に変わることがひとつの大きな転換期な気がします。医療業界にもたずさわっていますが実は同様の構造を抱えており、病院の運営に関して医療か経営か、ということが言われていますね。
経営者が気付くこと。そして現場一人ひとりの技術者にも、経営者感覚を持ってもらえるような教育をしていくことが重要です。
経営感覚とは、簡単に言えば『お客さまに対して臨機応変に見ていく目』です。理美容業界はマニュアル至上主義に見受けられますが、そうではないことを理解しなければ、人間の本当の美しさは何か、一人ひとりの喜ぶところは何か、というところに変わっていけないと思います。
石橋 おおむね技術者が経営者になるわけですが、技術がわからなければ経営が難しいということもあるでしょう。しかし経営のプロにならなければ、良い経営ができない時代にもなっています。つまり技術も経営も両方できるプレイングマネージャーになる必要があり、それも経営のほうが少し上にいくことだと思います。
伊藤誠一郎
・株式会社ナレッジステーション代表取締役/プレゼンテーション講師 |
伊藤 顧客の声と、造形美や色彩美、そして人間の美しさ。これらをどう組み合わせていくか。そうした発想が非常に重要で、技術とはまた別の次元で見ていく必要があると思います。
石橋 つまり、消費者が新しい価値観を求めている、ということを知ることだと思います。たとえば30年前、皮膚と健康の関係をいえば、健康のうえに皮膚の美しさがありました。『人体が健康でなければ、皮膚の美はない』という概念です。
しかし今では、皮膚は健康にかかわる免疫物質や神経伝達物質、ホルモンなどを合成し人体に影響を与えていることがわかってきました。『お互いに影響しあっている、対等の関係』という概念に変わっているのです。
メディアでも取り上げられていますから、社会的にも知られている。その中で理美容師が勉強していなければ、関心のある消費者をお客さまとして取り込めません。そしてスタッフたちにも、こうした価値観を教育しておかなければ、お客さまの新しい価値観には応えらない。ずっと造形美と色彩美だけでの教育を行なっていても、マーケットは拡大しないのです。
石橋 『髪を切る』という一定の需要は確保できますので、それに依存しやすいのかもしれませんね。しかしサロンが増えて顧客が減れば、不況になることは当然です。
産業とはそうしたことに関係なく、伸びていける芽を作る努力をしています。その中で目先の利く人が成功するのではないでしょうか。
たとえば以前のヘッドスパブーム。人間と皮膚や髪の毛の関係がわかり、それを消費者が期待したことから始まりました。しかし当時、思ったほど収益につながらなかった理由は、ヘッドスパの本質を理解しきれていないまま取り組んでしまったため。つまり消費者が本当に期待していることに、しっかりと応えられていなかったと言えます。
新しい概念で新しいマーケットが構築できるといったときに、本質を勉強せずに勝手なイメージで取り組んでしまったため、そのマーケットとはズレが生じてしまったのです。
それでもお客さまは諦めず、『どこかでちゃんとしたヘッドスパが受けられるはず』と流動していますが、失望が続けば諦めてしまいます。ですから当協会としても、ここはしっかり取り組んでいく考えでいます。
石橋清英
・株式会社ナボカルコスメティックス代表取締役 |
伊藤 今のマラソンやジム通いのブームもそうですよね。以前のダイエットは楽に、苦労せずに、簡単に、すぐ痩せることを謳い、それがマーケットになっていました。
しかし実際は思ったほどの効果が得られなかったことで、そのアンチテーゼとして痩せるためには努力が必要という価値の転換がおき、新たなマーケットになった。
これは『川上・川下の理論』なんです。たとえば今の人手不足という状況は何年も前からわかっていたこと。80~90年代でしたら多店舗化を目指すことが基本でしたが、これから開業するなら余程でない限り人手が必要な形態は考えません。つまり「人手不足だからやっていけない」というのは、それを見る感覚がなかったことになります。
ですから、一つひとつに興味を持ち、価値の変化をよく見ることに尽きると思います。
伊藤 たとえば『マーケティングとは何か?』と聞かれたらどう答えるでしょうか。私の考え方は「『売る』から『売れる』へ」です。『売る』は単純に売りつけようとする営業・販促で、わかりやすくいえば『今月も〇〇万円達成します!』というようにがんばる。
しかし『売れる』は『自然に』なのです。それがいわゆるリピーター。そうした言葉を理解してもらいながら、そうした世界があることを伝え、自身の業務で考えたときにどうなのかと尋ねてみます。
そしてお客さまの声をたくさん聞いているのだから、そこに『売れる』があることに気付いてもらう。これは美容や理容、エステティックだけのことではなく、どの業界でも同じこと。
人を動かすには、単純に説明することが重要なのですが、それにはシンプルに、その神髄を理解していなければなりません。そうしてまずやってみせて、スタッフに体感してもらう。だからスタッフも理解できて、お客さまに伝えられるのです。これを言い聞かそうとするだけでは、説教くさくなってしまいます。
顧客の声というのは、年齢や性別でカテゴライズできません。『〇〇さんはこう』というように一人ひとり異なりますから、その一人ひとりの優先順位に応えなければならない時代なのです。
しっかり考えて現場に立たなければいけませんし、『それがプロ』だということを先輩たちが体現してみせることが必要だと思います。ですから『休みはどこか行かれるんですか?』などと言っている場合ではありません。もちろん時候の挨拶はするなとは言いませんが、それだけでは単なる雑談。入り口は大事なのですが、それで終わってはいけません。すべてがビジネスチャンスなのです。
石橋 技術者にとっては、こうした取り組みが一番の醍醐味。やりがいも感じるはずです。そしてお客さまも、その技術者に担当してもらえれば一番満足するわけですから、リピーターになるかもしれない。大変な部分はあると思いますが、見合うだけの成果があるわけですから、しっかりキメ細かく取り組んでいくことが本当の経営ではないでしょうか。
ただ繰り返しになりますが、本質を理解していなければ上手くはいきません。やはり一つひとつのチャンスをどうすれば生かせるか、というところまで勉強することだと思います。
■訂正
月刊SALON OWNER 9月号に掲載いただきました記事中、P7「ヘッドスパの効果」について記載に間違いがありました。正しくは、以下の通りです。
ヘッドスパの3つの効果
1.頭皮や毛髪の生育環境改善
2.循環器系の改善
3.自律神経の安定